
コロナ禍以降、補助金の活用は多くの事業者にとって身近な選択肢になりました。国や地方自治体では、設備投資や新規事業、業務効率化などを後押しするため、さまざまな補助金が公募されています。そのため、「新しい設備を入れたい」「新規事業を始めたい」と考えたときに、補助金の活用を検討する方も増えています。
もっとも、補助金は給付金とは異なり、要件を満たせば誰でも受け取れるものではありません。多くの場合、事業計画を提出し、その内容が妥当であり、実現可能性が高いと認められてはじめて採択されます。
また、採択されたとしても、すぐに補助金が入金されるわけではありません。実際に投資を行った後、手続を経て支払われるのが一般的です。さらに、補助金の種類によっては、事業実施後に結果報告を求められることもあります。
このように、補助金は「申請して通ればお金がもらえる」というものではありません。投資の妥当性、事業計画の実現可能性、資金繰りまで含めて考える必要があります。そこで、この記事では、補助金を活用するにあたって押さえておきたい3つの実務ポイントを整理します。
補助金を活用しようと考えるとき、つい「補助金が出るなら、この機会にやってみよう」と発想しがちです。しかし、本来は順番が逆です。まず考えるべきなのは、その設備投資や新規事業が、自社にとって本当に必要であり、実行するだけの意味があるのか、です。
補助金は、単に「お金がもらえる制度」ではありません。国や地方公共団体が、税金を財源として、一定の政策目的に沿った取組みに対して支援を行うものです。そのため、審査においては、その事業が補助金の対象としてふさわしいか、実現可能性があるか、社会的・政策的な意義が認められるか、といった点が見られます。
とくに近年は、コロナ禍における不正受給や制度の濫用が問題になったこともあり、以前にも増して、計画の妥当性や実現可能性が厳しく見られる傾向にあります。単に「補助金を使って何か導入したい」といった動機から計画を立てると、審査員の共感を得られず、採択されにくくなる可能性があります。
だからこそ、補助金を検討する際には、まず「その投資は本当に必要か」「自社の経営課題の解決や売上・利益の向上につながるのか」「補助金がなくても実行すべき、自社にとって必要な取組みなのか」といった観点から考えことをおすすめします。こうした整理ができてはじめて、審査に耐えうる事業計画の土台ができあがります。
補助金の申請では、見栄えの良い言葉を並べることよりも、その事業を行う必要性と妥当性を、熱意をもって、客観的なデータや市場のニーズに基づいて説明していくことが重要になります。高い熱意を持って書かれた文章は読む人に伝わりやすくなり、説得力が生まれます。補助金が出るからやる、ではなく、会社にとって絶対必要な投資だからこそ補助金を活用したい――その気持ちを審査員に伝えられるよう、投資の内容をしっかりと検討することが、補助金獲得のための実務上の第一歩になります。
補助金の審査において重視されるのは、その事業が本当に実現できるのか、という点です。言い換えれば、採択される計画とは、実現可能性が高いと審査員に感じてもらえる計画です。なぜなら、税金を投入する以上、計画が失敗に終われば国民が納めた貴重な税金が無駄になってしまうからです。
そのため、計画は実現可能性が高く、それが審査員に伝わりやすいものにする必要があります。単に「売上が伸びます」「新しい市場を開拓できます」といった抽象的な説明だけでは足りません。
いつ、何を、どのような手順で進めるのか、誰が担当するのか、事業を実行する体制はどうなっているのか。何をいくらで売り、どれくらいのお客さんが見込めるから、売上がこれくらい上がるのか。そのための費用はどれくらいかかり、どの程度の利益が見込めるのか。さらに、それを積み重ねることで、数年後にどのような企業に成長していくのか。こうした実現までの見通しやプロセスを、具体的に示していく必要があります。
補助金の申請では、とかく審査員に良く見せることを意識しがちです。しかし、数字だけをきれいに見せたり、理想的な将来像ばかりを書いたりしても、実際の体制やスケジュールが伴っていなければ、かえって実現可能性に疑問を持たれるおそれがあります。審査員が見ているのは、見栄えの良さそのものではなく、その会社が本当にその計画を実行できるかどうか、です。
また、事業計画は審査員に提出して終わるものではありません。採択後に実際に事業を進める際には、社内の担当者や協力先と内容を共有しながら進めていく必要があります。その意味でも、事業計画は「審査員向けの作文」ではなく、「実際に動くための設計図」になっていなければなりません。
補助金を獲得するためには、採択されそうなことを書くのではなく、実行することを、実行できると伝わる形で示すことが大切です。スケジュール、体制、役割分担、売上見込みなどを現実に即して整理し、それが自然に伝わる計画にしておくことが、採択可能性を高めるうえで重要になります。
補助金を活用する際に見落とされがちなのが、資金繰りの問題です。補助金というと、「採択されればお金が入ってくる」と考えがちですが、多くの補助金は後払いです。つまり、補助金が入る前に、設備投資やシステム導入などに必要な費用を、いったん自社で支払わなければなりません。
しかも、補助金は投資額の全額を補助してくれるものではなく、その一部を補助する仕組みです。そのため、仮に採択されたとしても、自己資金がどれくらい必要なのか、いつ、どのタイミングで資金が出ていくのかを事前に整理しておかなければ、事業の途中で資金繰りが苦しくなるおそれがあります。
とくに、投資額が大きい場合や、自己資金に余裕がない場合には、補助金だけを前提に計画を立てるのは危険です。補助金が入金されるまでの間、運転資金や投資資金をどう確保するのか、必要に応じて、つなぎ融資や追加融資を受ける可能性があるのか、といった点まで視野に入れておく必要があります。事業計画を元に、金融機関とどのように『つなぎ融資』の交渉を進めるかといった実務も含めて、あらかじめ計画に織り込んでおくことが重要です。
補助金の計画を考える際には、「採択されるかどうか」だけでなく、「採択された後に資金面で無理なく進められるか」という観点を持つことが重要です。どれだけ見栄えの良い計画でも、実際の資金繰りが回らなければ、事業を予定通り進めることはできません。
そのため、補助金を活用した事業計画では、投資内容や売上計画だけでなく、補助金の入金までの時間差や自己資金の負担も含めて、資金の流れをあらかじめ整理しておくことが大切です。事業計画と資金調達を切り離して考えず、一体のものとして検討することが、補助金活用を成功させるための重要なポイントになります。
補助金を活用するにあたっては、申請書類を整えることだけでなく、その投資が本当に妥当なのか、実行可能な計画になっているのか、資金繰りも含めて、無理のない内容になっているのかを、あらかじめ整理しておくことが重要です。
あらた株式会社では、補助金活用を見据えた事業計画の整理・策定から、必要に応じた資金調達の検討まで、ご相談を承っています。単なる制度説明や書類作成支援にとどまらず、事業として実行し、目的を達成できる計画になっているかという観点から、実務面を踏まえたご支援を行っています。
補助金の活用を検討しているものの、「この投資が本当に妥当なのか分からない」「計画の組み立て方に不安がある」「補助金入金までの資金繰りも含めて整理したい」といった場合は、資金調達・事業計画策定支援ページもご覧ください。