起業の基礎知識|個人事業主としての開業で必要な手続〜開業届や青色申告承認申請書の提出について〜

起業の基礎知識

この記事では、個人事業主になるために必要な手続について解説していきます。

事業を始める場合には、「会社を設立」と「個人事業主になる」の大きく2パターンに分けられ、それぞれ、手続きが異なりますが、ここでは、後者の個人事業主になるための手続きを解説しています。
個人事業主になるための手続きでは、①開業届の提出②青色申告承認申請書の提出がポイントとなりますので、以下では、この2点について解説していきます。

開業届の提出

まずは『開業届の提出』についてです。

開業届とは何か

「開業届」という名称(厳密には「個人事業の開業届出・廃業届出書」)から、事業を始めるための許認可のような印象を受けるかもしれません。
しかし、この書類は、課税上の問題から「税務署に対し自らが開業したことを伝える届出書」としての意味合いが強い書類です。
この開業届を提出すると、その後毎年確定申告の時期に、申告に関わる書類一式が税務署から送られてくるようになります。

開業届の記載事項

開業届は税務署で直接受け取ることもできますし、Webサイトからダウンロードすることも可能です。

フォーマットを見れば確認できますが、主に以下の項目を記載することになります。

  • ① 氏名
  • ② 屋号(記載は任意)
  • ③ 職業
  • ④ 事業の概要
  • ⑤ 納税地
  • ⑥ 納税地以外の事業所
  • ⑦ 届出の区分(開業なのか、廃業なのかを記載)
  • ⑧ 所得の種類(事業所得、不動産所得、山林所得の別)
  • ⑨ 開業日(または廃業日)
  • ⑩ 開業(または廃業)に伴う届出書の提出の有無

屋号など、記載が必須とはされない事項もあります。
例えば、上記の他に給与の支払いに関する事項というものがあるのですが、従業員がいないときには給与の支払いに関する事項は記入しなくてもかまいません。

提出先・提出期限について

開業届は、開業者の納税地を所轄する税務署に提出します。
所轄の税務署がどこなのかや、その所轄の税務署の所在地等の情報は国税庁のWebサイトから確認できます。

提出方法は「窓口で直接提出する方法」と「郵送で提出する方法」があります。
窓口に行く場合、開庁曜日・時間に注意が必要です。
通常は平日しか開いていませんし、日中の時間帯でしか対応してもらえません。
※時間外収受箱に投函することは可能

提出期限に関しては、「事業の開始から1ヶ月以内」と定められていますので、事業を開始したら、なるべく速やかに提出しましょう。
なお、様々な事情で期限を過ぎてしまったとしても、この期限を少しでも過ぎたらペナルティが発生するというわけではありませんので、提出していないことに気が付いたら早急に提出するようにしましょう。
※開業年の収支につき確定申告をすれば開業届の代わりとすることは可能

なお、近年はフリーランスとして活動を始める方、副業で収入を得る方も増えてきていますが、このような方も開業届を出すべきか検討したほうがよいでしょう。
出すべきかどうかの判断において重要な観点は、「継続的に利益を得ているかどうか」ということです。

フリー(または副業)のイラストレーターとして活動している、ライターとして活動しているブログ運営をしている場合など、肩書はいろいろあるかもしれませんが、いずれにしろ継続的な事業所得があると評価されそうな場合には提出しておいたほうがよいです。
他方、ネットオークションやフリマアプリ等で不用品を売るなど、「事業ではない」「継続的な収入がない」という場合であれば開業届を出す必要はないでしょう。
これらのケースで得た所得は雑所得に該当すると考えられているからです。

青色申告承認申請書の提出

開業届を提出するとき、同時に「所得税の青色申告承認申請書」も提出しておくことが推奨されます。
この書類は提出が義務付けられている書類ではありません。
青色申告承認申請書を提出しなくても白色申告で確定申告することができ、開業自体は問題なくできるのですが、書類を提出しておくことで税制上の大きな恩恵が受けられるようになります。

青色申告とは何か

青色申告とは、確定申告の方法のひとつです。
確定申告には、白色確定申告青色確定申告という2つの方法があります。
開業届を提出する場合には、確定申告は「白色確定申告」で行うことになるのですが、所得税の青色申告承認申請書を提出することで確定申告を青色申告で行うことができるようになります。

青色確定申告では、制度に沿って一定水準を満たす形で会計を行うことで(日々の取引状況を複式簿記の方式で記録していく)、いくつかの特典を得ることができます。
その特典とは、「青色申告特別控除により55万円(電子申告なら65万円)の控除を適用させることができる」「専従者給与の経費計上」「赤字の3年繰り越し」などです。
これらの特典によって、申告者は、上げた利益の中から収める税金を減らす効果が得られるようになります。

経理業務に慣れていないと一定水準を満たす形で会計を行うのは大変かもしれませんが、税理士に記帳代行などを依頼することが可能です。
この場合依頼料は発生しますが、それ以上の節税効果を期待することができます(もちろん、依頼料によりますが)。
また、近年では、様々なクラウド会計サービスがありますので、それらを利用すれば、税理士に依頼をしなくても、自分で経理業務を行うことも可能です。

ちなみに、青色申告承認申請書を提出しない場合には、白色申告を行うことになりますが、この場合には、単式簿記と呼ばれる記帳で足り、比較的簡単に経理業務が進められるようになります。
しかし、青色確定申告で認められているような特典がないため、青色確定申告に比べると税金が多くなってしまします。

そのため、できる限り、税理士に任せる、または会計サービスを利用するなどして制度に沿った経理業務を行えるようにする方法を検討して、青色申告を行うようにした方がよいでしょう。

青色申告承認申請書の記載事項

青色申告承認申請書は、開業届同様税務署で受け取ることも、国税庁のWebサイト上でダウンロードすることも可能です。

記載事項も開業届と共通するものが多いので、氏名や納税地、職業、屋号などは開業届とずれがないように記載していきましょう。

その上で、「相続による事業継承の有無」や「簿記方式(複式簿記、簡易簿記の別)」、「備付帳簿名(現金出納帳、総勘定元帳、仕訳帳、固定資産台帳などのこと)」などを記載していきます。
このとき、青色申告特別控除が利用できるようにするため、簿記方式の欄は「複式簿記」を選択します。
そして備付帳簿名の欄では「総勘定元帳」と「仕訳帳」を選択しておきます。

提出先・提出期限について

青色申告承認申請書はやはり課税に関わるものですので、開業届と同じく、管轄の税務署に提出します。
書類は、直接窓口で提出するか、郵送で提出します。
※開庁時間外収受箱に投函することも可能

ただし提出期限の定めは異なります
青色申告をしようとする最初の年の3月15日まで」であって、新たに事業を開始したのなら「事業開始から2ヶ月以内」と定められています。
※青色申告につき承認を受けていた被相続人の事業を継承した場合、相続開始日の時期に応じて期限が異なるため要確認

開業届の期限が1ヶ月以内ですので同時に出すのであれば期限を気にする必要はありませんが、途中から青色申告に切り替えるというケースでは提出時期に留意しなければなりません。

まとめ

今回は起業の基礎知識として、個人事業主になるために必要な手続について解説してきました。

個人事業主になるための手続きでは、①開業届の提出と②青色申告承認申請書の提出を行います。

開業届は、納税地を所轄とする税務署に提出する書類で、これを提出することで、税務署では個人事業主が事業を開始したことを知ることができ、確定申告の時期に、申告に関わる書類一式が税務署から送られてくるようになるのでした。

青色申告承認申請書は、提出しないといけない書類ではありませんが、これを提出することで、特典として納める税金の額を減らすことができるのでした。
ただ、青色申告をするには、日々の取引を複式簿記の方法で記録するなど、一定の条件があるため、そうした条件を満たせるように、税理士に依頼したり、クラウド会計サービスを使うなどして、条件を満たせるように経理業務を行えるようにすることを検討しておく必要があります。

個人事業主で事業を始める場合には、ぜひ、上記のようなことを参考にしてみてください。

 

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